寺子屋

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書評:「美学」Alexander Gottlieb Baumgarten

著者のカタカナ読みは,アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン.18世紀の神聖ローマ帝国プロイセン王国出身の思想家.

本書は,美学を哲学の一領域として確立させた著者の代表作.800ページにも及ぶ大作でありパラパラと眺めるのも一苦労であり,内容も難解である.しかしながら根気よく読み進めると随所に直観レベルで腑に落ちる記述がある.例えば

崇高なものは時には極めて短いし,時にはすぐれて豊麗,富裕である.ところがこれを逆にして,短ければ短いほど,または拡散すればすれるほど崇高である,と言うのは極めて悪しき歪曲である

などは,十分理解できる万事に通ずる真理ではないだろうか.また,

どんな主題についてであれ,明晰に恣意する前に輝かしく思惟しようとしてはならない.明晰にすら提示しえないものを自然な光輝で照らしうると期待するな.

なども腑に落ちる.

たとえ全体は既に知られたものであっても,何かそのどこかの部分,なんらかの位相ないし側面が他の部分,位相,側面より考察されてこなかったどうかを熟視すべきであり,(中略)(それらを)相対的な闇から引き出せ

などもメッセージ性が強い.本書全体を理解することは容易ではないいが,このように部分部分にエッセンスとなるセンテンスを見つけることはできる.