寺子屋

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書評:「超加速経済アフリカ―LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図」椿 進

著者はアフリカ関連ビジネスコンサル.自身もルワンダマカダミアナッツ農園を経営.

本書は,日本にとって馴染みの少ない最近のアフリカ動向を紹介した一冊.間違いなくアフリカの印象が変わる.今のアフリカ諸国は,リープ・フロッグ・イノベーションという先進国の成長過程を飛び飛びに実現している状態だと述べている.例えば電話線も電気もないのに,スマホ普及率は100%近いなどなど.個人的に最も驚いたのはモバイル決済の普及率が9割近いということ.ありとあらゆる場所でモバイル決済(M-PESA)が前提となっているらしい.'これは金融関連の法的整備がなされてなかったため,ベンチャーが何のしがらみもなく活動できたことに起因しているらしい.

この他にも,未発達だったからこそ既得権益者や法的しがらみが少なく,先進国で導入が進まないイノベーションが数多く成功していると紹介されていた.ドローンを用いた血液輸送などもその一例だ.一方で,M-PESAを提供する通信会社や有名ベンチャー旧宗主国資本であることが多く,結局のところ植民地時代のマネ―構造と変わらないという側面もある.

全体的に著者の幅広い見識がよくまとまっており,ワクワクする内容であった.しかし,日本企業はアフリカでほとんど存在感がないというのは少し残念であった.トヨタ,カネカ,味の素などが名実ともに存在感があるものの,インフラ整備などはほとんど中国企業が請け負うらしい.著者は,日本が経験してきた成長過程を今のアフリカ諸国は辿っているとし,経済レベルがどのくらいなら何が流行するかを把握している日本は先手を打ってアフリカビジネスを展開するべきと主張している.これは大きな間違いだろう.実際はリープ・フロッグなのだから.